日本において現(xiàn)存する最古の文獻は『古事記』とされる。この書物は周知のように、全文が中國の文字で記されており、日本文學(xué)と中國語が上代から密接な繋がりをもっていたことを示している。古代日本では中國語の変化に伴い、平安時代初期に典籍を漢音で読むことがさかんになると、日本語の內(nèi)に拗音や音便が生じた。また漢字から片仮名や平仮名が作られていった。古代の詩はもちろん、『萬葉集』に集められた和歌も、また『源氏物語』などの物語も、中世の鴨長明『方丈記』などの隨筆、近世の曲亭馬琴の読本も、みな中國から渡來した文化の影響を受けながら成立したものである。近現(xiàn)代には歐米からの影響を強く受けるが、夏目漱石や芥川龍之介、川端康成らの小説にも中國文化の影は深く射している。日本語と日本文學(xué)の歴史は、実に長いあいだ、中國語と中國文學(xué)の影響を受けながら獨自に展開してきたのである。
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